「現行調査をやってみたいが、具体的に何が手に入るのかイメージできない」——これは、現行調査を検討している担当者から最もよく聞く言葉だ。現行調査は、「今のシステムの実態を把握するプロセス」として紹介されることが多い。しかしそれだけでは、調査後に何が変わるのかが見えにくい。この記事では、現行調査の結果として実際に得られる情報と成果物を具体的に整理する。現行調査で明らかになる4つのこと1. システム構成の全体像現行調査を通じて最初に整理されるのが、「今どんなシステムが、どこで、どのように動いているか」の全体像だ。多くの企業では、長年の運用の中でシステムが少しずつ追加・改修されてきた結果、「全体像を正確に把握している人がいない」という状態になっている。どのサーバーが何の役割を持つか、どのシステムとどのシステムが連携しているか、データはどこに格納されどう流れているか——これらを文書として整理したものが、調査の最初の成果物になる。この構成図は、刷新の要件定義だけでなく、障害時の対応や新担当者へのオンボーディングでも使える資産になる。2. 業務プロセスとシステム機能の対応関係「この業務は、システムのこの機能が担っている」という対応関係の整理が、現行調査の中核となる成果だ。要件定義の場面で「今と同じことができるように」という要求が出るとき、その「今と同じこと」が何を指すのかを正確に言語化できている企業は少ない。業務フローとシステム機能の対応関係が整理されていれば、新システムへの移行要件が「何を引き継ぐか」「何を変えるか」という判断可能な形になる。これが整っているかどうかで、その後の要件定義の精度が決定的に変わる。3. 属人化している知識・暗黙のルールの可視化現行調査で明らかになる情報の中で、最も見えにくく、最も重要なのが「担当者の頭の中にしかない情報」だ。「この処理はAさんしか知らない」「このデータは毎月末に手動で修正している」「このベンダーとはある時期に口頭で合意している取り決めがある」——こうした暗黙知は、ヒアリングを通じて初めて言語化される。現行調査は、こうした属人化している知識を組織の資産に変えるプロセスでもある。担当者がいる間に調査を行うことで、退職・異動後に失われる情報を事前に保全できる。4. 刷新・改善の判断に使える「現状評価」現行調査の結果は、「現状の整理」にとどまらず、「どこに問題があり、何を優先すべきか」の判断材料になる。具体的には以下のような問いへの答えが得られる。サポート切れ・老朽化しているシステムはどこか属人化リスクが高い業務・システムはどこか移行時に特に注意が必要な複雑な業務ロジックはどこかパッケージで代替できる部分と、スクラッチ開発が必要な部分はどこかこれらの情報は、ベンダーへの見積もり依頼や、社内の予算申請・経営への説明資料に直接使える。現行調査があることで「その後」が変わる現行調査の成果物は、一度作れば終わりではない。刷新プロジェクトが進む中で、要件定義・設計・テストの各フェーズで繰り返し参照される。また、刷新が完了した後も、次の担当者への引継ぎ資料や、システムの運用ドキュメントとして機能し続ける。「調査に時間と費用をかけることへの懸念」はよく聞く。調査にかかるコストの投資対効果を数値化することが難しいためだ。投資判断をする立場からしたら、何を根拠としてその調査にコストをかけるべきかの情報が欲しい。しかし現行調査なしに進んだプロジェクトで後から発生する「話が違う」「追加要件が増える」「稼働後に業務に合わない」といった問題のコストは、調査にかかるコストを大きく上回ることが多い。参考として、開発規模5,000万〜1億円のプロジェクトにおける各フェーズの費用感を示す。現行調査のコストは全体に占める割合として小さく、それによって後工程の手戻りを防ぐことができれば、投資対効果は十分に見込める。費用感備考現行調査(従来型)1,500万〜2,000万円従来型の現行調査現行調査(AI活用型)500万〜1,000万円AI活用型サービスの場合要件定義500万〜800万円開発コストの10〜15%が目安開発3,000万〜5,000万円運用保守500万円年間。開発費・システム規模により変動あわせて読みたい:基幹システム刷新の進め方|現行調査・要件定義の正しい順序——現行調査を起点にした刷新プロジェクトの正しい流れなぜ基幹システムの刷新は予算オーバー・遅延・頓挫するのか——現行調査を省いたときに何が起きるかSIerに相談する前に自社で整理すべき3つのこと——現行調査の結果をSIerへの相談にどう活かすか当社ではAIを活用した「AI仕様解析」という現行調査サービスを提供しています。現行調査について詳しく知りたい場合や、調査の進め方を相談したい場合は、現行調査サービスからご連絡ください。