預かった後、その品物がどこにあるか追えていない時計・ジュエリー修理は、靴や衣類の修理と大きく異なる点がある。修理を自社で完結できないことだ。 受付店舗でお客さまから預かった時計やジュエリーは、メーカーや専門修理センターへ送られる。そこで修理・点検が行われ、数週間から数ヶ月後に店舗に戻ってくる。お客さまはそれを受け取りに来る。 このフローの中で、「今その品物がどこにあるか」「いつ戻ってくるか」が、受付店舗からリアルタイムで見えない状態になっていることが多い。 高価な品物を預かっているにもかかわらず、進捗が見えない。これがこの業態特有の、構造的なリスクだ。問題① 「今どこにあるか」をお客さまに答えられないお客さまからすれば、大切な時計やジュエリーを預けている。「今どんな状態ですか?」という問い合わせは自然な行動だ。 しかし受付スタッフが問い合わせに対応しようとすると、送り先のメーカーや修理センターに電話し、確認し、折り返す、という手順が発生する。これが一件ならいい。複数の問い合わせが重なると、スタッフの時間が問い合わせ対応だけで埋まる。 「お預かりしてから連絡がない」という不満が積み重なると、信頼に直結する。高額品を扱うビジネスで、進捗の透明性はサービス品質の一部だ。にもかかわらず、その管理がスタッフの電話一本に依存している。問題② 見積もりが変わったとき、顧客への連絡が遅れる修理の見積もりは、受付時点では仮のものであることが多い。実際にメーカーや修理センターが品物を確認してから、正式な費用が出る。 仮見積もりと正式見積もりに差があった場合、お客さまへの確認が必要になる。しかしこの連絡が滞るケースがある。メーカーから店舗への連絡が来ても、担当スタッフが不在だった、引き継ぎが漏れた、連絡したつもりで記録が残っていなかった──。 結果として、お客さまが受け取りに来て初めて「金額が変わっています」と伝えられる事態が起きる。預け入れから受け取りまでの間、見積もりの変更情報が適切に管理されていないことが原因だ。問題③ 複数の外部送り先の管理が、Excelと手書きに分散している時計・ジュエリー修理では、送り先が一社ではない。ブランドごとにメーカー修理窓口が異なり、対応できない修理は専門の修理職人に依頼し、電池交換だけなら自社で対応する──送り先の組み合わせは複雑だ。 それぞれの送り先との連絡手段もバラバラだ。メーカーには専用の修理依頼書をFAXで送り、専門職人とはメールと電話、別の業者とは担当者の携帯電話でやり取りする。 これらを束ねる管理台帳が、担当者のExcelや手書きノートに分散している。どの品物をどこに送り、いつ戻る予定で、見積もりがいくらだったか──この情報を横断的に把握できる状態になっていない。担当者が複数いれば、それぞれが自分の管理方法で動く。構造的な問題の本質──「外に出た物」の管理設計がない3つの問題に共通しているのは、「外部に預けた品物」の管理設計が存在しないことだ。 自社の工場で完結する修理であれば、社内の動線を整えればいい。しかしメーカー送りが発生する業態では、品物が「社外」に出た瞬間に管理の目が届かなくなる構造がある。 この構造を放置したまま店舗数を増やすと、問題は比例以上に増える。一店舗なら担当者が記憶で補完できても、複数店舗になると補完しきれなくなる。 変えるための最初の一手は、「外部に品物を送った後、何がどう動いているか」を書き出すことだ。送り先ごとの連絡方法、見積もりの確認タイミング、返却までの標準的な流れ──これを一度整理するだけで、どこに管理の抜けがあるかが見えてくる。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断