社内にシステムの知識がないからベンダーにまかせる。保守は外部委託の方がコストが軽いから続ける。一度定まった体制は成果が出ているうちは変えない。こうした判断は、小さく見れば守りの姿勢として理にかなっているように見える。しかし外部ベンダーへの依存が深まるほど、取り返しのきかないリスクが経年的に積み上がっていく。この記事では、外部ベンダー依存が引き起こす具体的なリスクと、情シス担当者がそれに対してできることを整理する。ベンダー依存のリスクは「かくれた形」で現れる外部ベンダー依存の問題は、ある日突然起きるわけではない。小さな事象が少しずつ重なり、あるタイミングで初めて見えるようになる。典型的なパターンは次のようなものだ。あるシステムの保守をベンダーにA社に委託して少し経つ。トラブルが起きればA社に連絡する。少し経つと、A社がいないとシステムの状態すら確認できなくなる。さらに経つと、A社の担当者が交代し、新しい担当者は自社システムの中身を知らない。問い合わせても「確認します」だけで回答が返ってこなくなる。この時点で初めて、「自分たちはシステムのことを何も知らない」と気づく。具体的に何が困るのか見積もりの判断ができなくなるベンダーから請求やライセンスの更新情報が届いても、内容の妥当性を判断できない。システムの作りがわからなければ、「ベンダーが言う通り」にならざるを得ない。別ベンダーへの切り替えが実質的に不可能になるシステム構成や設計資料がベンダー側にしかなければ、別の会社に引き継ぐのが困難になる。たとえコストや対応品質で見切りができる会社が見つかっても、システムの全体像や中身を引き渡せないと移行できない。コストの上昇を止められない依存度が高まるほど、ベンダー側の「値上がり」に対抗する手段がなくなる。別の選択肢がないと思われる客には、コスト交渉の余地が弱まる。トラブルへの対応が遅れる自社で原因切り分けできないため、ベンダーに全面的に委ねることになる。かつてはトラブル対応の主導権を持った内部担当者がいたが、今はわかる人がいないという状況になりやすい。ノウハウや設計思想が外に流出するという問題もあるベンダー依存には、システムだけの問題ではない側面もある。外部ベンダーに依存する時間が長くなるほど、システムの設計思想や運用ノウハウが外に出ていく。自社の業務工程やデータ構造を全部理解している外部会社が存在することになる。これはセキュリティリスクの観点からも問題だが、更に大きな問題は「自社の意思決定の自由度」が落ちることだ。システムに関する判断を自社内部でできなくなる。完全になくすのではなく、自社内に判断できる人を持つベンダー依存を完全になくすのは現実的ではない場合もある。外部専門家の活用はコスト面で理にかなっていることも多い。ただし、鍵となるのは「自社内に対話できる人がいるかどうか」だ。全部自社対応する必要はない。ベンダーからの説明を理解できる、迷ったときに判断できる、別の選択肢を探せる——その程度の『内部化』ができていれば、ベンダーとの関係は「割り切れない依存」から「選択としてうまく活用する外部リソース」に変わる。その内部化のために必要なこと内部化の最初の一歩は、「自分たちのシステムが実際にどうなっているか」を把握することだ。システムの全体像、データの流れ、カスタマイズの内容、外部連携の構造——これらが自社の手元にないなら、まずそこから始める必要がある。現状の正確な把握なくしては、内部化の計画も、ベンダーとの関係設計も、具体的な形にならない。あわせて読まれています:SIerに相談する前に自社で整理すべき3つのこと現行調査でよく見る5つのパターン要件定義が迷走する本当の理由