この記事を読めば、停滞しているシステム開発を、もう一度動かすためのヒントが見つかります。システムが完成しない原因は、開発が失敗したからとは限りません。実際には、業務は分かっている作りたいものも決まっているそれでも「今どこまで出来ているのか」が分からないそんな「判断できない状態」のまま、時間だけが過ぎてしまうケースがあります。この記事では、未完成のシステムを前に立ち止まっていた現場が、 「引き継いで一緒に整理する」という選択によって、 再び前に進める状態になるまでの経緯をまとめています。もし今、開発は進んでいるはずなのに、完成のイメージが持てない問題点をうまく説明できず、判断を先送りにしている「このままで大丈夫なのか」という不安だけが残っているそんな感覚があるなら、この話はあなたの現場にも関係があります。ここから先は、実際の現場で何が起きていたのかを、順を追って振り返ります。技術的な失敗談ではありません。誰かを責める話でもありません。なぜ「判断できない状態」に陥ったのか。そして、どうやってそこから抜け出そうとしたのか。その過程を、できるだけそのまま記録しています。はじめにこの記事は、実際にご相談いただいたお客様へのインタビューをもとに構成しています。特定の企業や担当者が分かる形ではありませんが、未完成のシステムを前に現場で何が起きていたのかそのとき、何を感じていたのかを、可能な限り当時の言葉のまま残しました。対象読者は、次のような立場の方です。事業部門でシステム開発を任されている方情報システム部門・PMとして判断を求められている方開発ベンダーとの間に立ち、進め方に悩んでいる方「何を作りたいかは伝えているつもりだった」「でも、なぜか前に進んでいる実感がなかった」そんな状態に心当たりがある方に、一つの現場の記録として読んでいただければと思います。1. 作りたいものは、ちゃんと伝えているはずだった業務依頼管理、顧客管理、各種ステータス管理、帳票出力。必要な機能は洗い出し、業務の流れも説明してきた。画面もある程度できており、社内で操作しながら確認も行っていた。当時は、こう感じていた。「システムの中身は分からないけれど、 作りたいもの自体は、きちんと伝えているはずだ」業務を一番分かっているのは現場だ。システムは、その業務を形にするためのもの。この感覚は、今振り返っても自然だったと思う。2. 気づくと、「前に進んでいる実感」だけがなくなっていたある時から、小さな違和感が積み重なっていった。修正をお願いすると、別の画面で不具合が出る。以前は使えていたはずの機能が、いつの間にか使えなくなっている。テストリリースをしてみると、「少し直せば済む」レベルではないエラーが次々に見つかる。一つひとつは説明できる。けれど、全体として前に進んでいる感覚がなかった。作ってもらってはいる。それでも、完成に近づいている手応えがない。この状態が続くと、不満よりも先に、不安が前に出てくる。3. 判断できなかった理由は、「今の姿」が見えなかったこと業務の説明はできる。作りたい機能も、頭の中にはある。それでも、次の問いには詰まってしまった。今、どこまで出来ているのかどこが不安定なのかここを直すと、どこに影響が出るのかベンダーに聞かないと分からない。説明を受けても、完全には理解しきれない。理解できていない、という感覚はない。けれど、次にどうするかを決める材料が足りなかった。業務は分かっている。しかし、システムの「今の姿」を説明できる人がいなかった。その結果、判断できないまま、時間だけが過ぎていった。4. 「未完成のまま相談していい」という発想がなかった当時は、「引き継ぐ」という選択肢自体を考えていなかった。引き継ぎとは、完成したシステムを渡すもの。少なくとも、形になってから行うもの。未完成で、エラーも多く、中身もよく分からない状態で、相談していいとは思えなかった。「もう少し整えてからでないと」「説明できる状態になってからでないと」そう考えた結果、分からないまま抱え続ける時間が長くなってしまった。5. 引き継ぎとは、「完成させる約束」ではなかった後から気づいたのは、整理できていないからこそ、引き継ぐという考え方だった。未完成でもいい。説明しきれなくてもいい。まずは、現状を一緒に見てもらう。引き継ぎとは、完成を約束する行為ではなく、判断できる状態に近づくためのプロセスだった。6. どう進めるか分からなくても、「目安」は作れる次に悩んだのは、これからどう進めればいいのかという点だった。費用はいくらになるのか。選択肢は大きく二つあった。完成範囲を決めて見積を出す「請負型」現状を整理しながら判断していく「体制型」設計資料も十分ではなく、仕様の経緯も整理されていない状態では、正確な見積を出すこと自体が難しかった。そこで、まず判断材料を揃えるところから始める、という進め方を選んだ。7. 既存の開発会社とは「評価せず、対立せず」に進めた引き継ぎは、評価や対立の場ではない。次の工程に進むための整理だと位置づけた。否定しない責任を追及しない業務を止めない一定期間は並走し、必要な工数にはきちんと費用を払う。その姿勢を示すことで、引き継ぎは想像していたほど難しくはなかった。編集後記「止まっていた」のではなく、「判断できなかった」この話は、システム開発の失敗談ではありません。問題だったのは、未完成な状態を、どう扱えばいいか分からなかったこと。もし今、システムはあるが、完成のイメージが持てない問題点を説明できず、判断を先送りにしている時間だけが過ぎている感覚があるなら、それは失敗ではなく、まだ整理されていない状態にいるだけかもしれません。未完成でもいい。まずは、現状を一緒に見てもらう。その一歩が、次の判断につながることがあります。