「うちの情シスは○○さんひとりで回している」——中堅・中小企業では、これが当たり前の状態になっていることが多い。ひとりで社内のITインフラを守り、ユーザーサポートをこなし、ベンダーとの交渉も引き受ける。業務の範囲は広く、頼りにされているがゆえに、「その人がいなくなったらどうなるか」を誰も真剣に考えない。ひとり情シスの会社で起きる3つのリスク1. 「何がどこにあるか」が本人しかわからないひとりで長年システムを管理していると、サーバーの構成・ライセンスの更新時期・ベンダーの連絡先・社内の例外ルールなど、あらゆる情報が一人の人間に集約されていく。これらの情報は、日常業務の中では問題にならない。問題が顕在化するのは、その担当者が突然休む・退職する・異動するタイミングだ。「○○さんに聞けばわかる」が使えなくなったとき、会社は初めてそのリスクの大きさに気づく。2. 担当者が「休めない」状態になるひとり情シスの会社では、担当者が長期休暇を取ることが実質的に難しくなるケースがある。「自分がいないと対応できない」という状態は、担当者本人への負担であると同時に、会社としての構造的なリスクでもある。障害が起きたとき・ベンダーとの交渉が必要なとき・セキュリティインシデントが発生したとき——これらに対応できる人物が社内にひとりしかいない状態は、会社の業務継続性に直結する問題だ。3. 引継ぎが成立しないひとり情シスが退職・異動するとき、引継ぎは本来であれば最も重要なプロセスになる。しかし実態として、「その人しか知らない情報が多すぎて、短期間の引継ぎでは伝えきれない」という状況が起きやすい。後任者が着任しても「何から手をつければいいかわからない」という状態になる。前任者が去ってから初めて「あの件はどうなっているんだっけ」という問いが次々と生まれる。なぜこの構造が生まれるのかひとり情シスが常態化しやすいのは、会社がある特定の成長段階にあるときだ。年商数十億規模まで成長した企業は、経営管理の仕組み化や業務プロセスの標準化を乗り越えてきた会社が多い。再現可能なモデルを積み上げることで売上を伸ばし、情シスの専任担当を置けるようになり、本格的なIT投資も始まっている。しかし経営サイドの関心は、次の仕組み化・次の成長にある。コストとして見えやすい情シスの体制強化は、後回しになりがちだ。そして気づけば、情シス担当者が一人で多くを抱え込んでいる——その実態が経営側には見えにくいという構造が生まれる。「備える」ために最初にやることステップ1:現状の棚卸しを文書として残す最初にやるべきことは、今ひとりの担当者の頭の中にある情報を、文書として外に出すことだ。システム構成・ベンダー連絡先・定期作業一覧・障害時の対応手順——これらを整理することが、すべての備えの起点になる。完璧なドキュメントを一度に作ろうとしなくていい。まず「骨格」を作り、業務の中で少しずつ補っていくアプローチが現実的だ。ステップ2:「説明できる人」を社内に育てるドキュメントを作ることと並行して、情シス担当者以外の人間が「このシステムについて最低限説明できる」状態を作ることが重要だ。全部を引き継ぐ必要はない。特に重要なシステム・高頻度の障害・ベンダー連絡先の3点だけでも、複数人が把握している状態にするだけで、リスクは大きく下がる。ステップ3:現行調査で「今の実態」を組織の資産にするひとり情シスの担当者が元気なうちに、現行調査を活用して「今のシステムの実態」を組織の資産として文書化しておくことが、最も確実な備え方だ。現行調査は、担当者へのヒアリングを通じて、頭の中にある情報を引き出し、整理するプロセスでもある。これを担当者がいる状態で行うことで、退職・異動後に失われる情報を事前に保全できる。「辞めることが決まってから」では遅い。ひとり情シスが安心して働ける環境を作るためにも、今の段階から準備を始めることが重要だ。あわせて読みたい:ベテランSEが突然退職しても、システムが止まらない会社のつくり方——担当者依存からの脱却と、現行調査による体制づくりシステム保守の引継ぎ資料はなぜ機能しないのか——使える引継ぎ資料に必要な5つの要素システム引継ぎチェックリスト完全版——引継ぎに何が必要かを体系的に確認できるひとり情シスの状況で現状把握から始めたい場合は、現行調査サービスからご相談ください。