前任者が去っても、役員会でシステム現状を報告できる資料のつくり方情報システム部の前任担当者が去った。引き継ぎは形式的に終わった。しかしそのとき、こんな問題が残る。「役員会でシステムの現状を聞かれたとき、自信を持って答えられるか?」前任者が作った資料はある。しかしそれが今の実態と合っているかどうか、確信が持てない。質問されたときに「前任者に確認します」とは言えない。こうした状況は、情シス担当者の交代のたびに繰り返される。そして多くの場合、「なんとか乗り切る」で終わり、根本的な問題は解決されないまま次の担当者へと引き継がれていく。なぜ「前任者が去ると説明できなくなる」のか役員会でシステム現状を報告できない根本的な原因は、「知識が人に紐づいている」ことだ。前任者がシステムを把握していた。だからシステムの現状が「説明できる状態」にあった。しかしその知識は、前任者の頭の中にあったのであって、組織の資産として残っていたわけではない。前任者が去ると、説明できる人がいなくなる。資料はあっても、それが正確かどうかを判断できる人がいない。この問題は、優秀な後任者を採用しても解決しない。後任者が着任してから自力で把握しようとすれば、時間がかかる。その間、役員会や監査対応の機会は待ってくれない。「役員会で説明できる状態」とは何か役員会でシステム現状を説明できる状態とは、具体的には以下を指す。現状の全体像が把握できているどんなシステムがあり、何の業務を支えており、どのデータがどこにあるか。これを、担当者が変わっても説明できる形で文書化されている。リスクが把握・整理されているサポート切れのシステム、属人化している運用、セキュリティ上の懸念——これらを自分の言葉で語れる状態になっている。改善の方向性が示せる現状を把握した上で、「何を、いつまでに、どう改善するか」の方向性がある。役員が求めているのは現状報告だけではなく、「この担当者に任せていいか」という判断材料だ。現行調査で「引き継ぎに依存しない」体制をつくるこれらを実現するために有効なのが、現行調査だ。現行調査は、現在のシステムを外部の目で体系的に調査・文書化するプロセスだ。前任者からの引き継ぎに依存せず、「今の実態」をゼロから把握する。引き継ぎ資料が不完全でも、前任者が連絡を取れない状態でも、現行調査は「今のシステムの実態」を明らかにする。その結果として作成されるドキュメントが、役員会で説明するための根拠になる。重要なのは、現行調査の結果を「前任者が作った資料の更新版」として組織に残すことだ。これにより、次に担当者が交代したときも、また同じ問題が繰り返されることを防げる。担当者が変わるたびに、同じ問題を繰り返さないために前任者が去るたびに「誰もわからない」という状態になる。これは、多くの組織が経験している共通の課題だ。しかし、これは避けられない問題ではない。システムの知識を「人」ではなく「組織」の資産として残す仕組みをつくれば、担当者が変わっても、役員会で説明できる状態を継続できる。前任者が去っても、役員会でシステム現状を報告できる体制——その起点となるのが、現行調査だ。あわせて読まれていますなぜシステム引継ぎは失敗するのか——3つの構造的原因と、失敗しないための考え方ベテランSEが突然退職しても、システムが止まらない会社のつくり方SIerに相談する前に自社で整理すべき3つのこと現行調査について相談する →