デジタル化が進んだ業界に見えて、現場は今も紙で動いている写真プリント・看板製作・のぼり旗・ステッカーなど、受付窓口でオーダーを受けて工場で加工し納品する業態は、表向きデジタルに見える。 お客さまはデータをUSBやオンラインで入稿する。出力機器はデジタルだ。しかし受付から工場への指示の伝達は、今も手書きの指示票とFAXが主役であることが多い。 なぜデジタルの業界で、アナログが残るのか。その構造を整理する。理由① オーダーの「特殊指定」が多すぎて、定型フォームに収まらない写真プリントや看板製作のオーダーは、一件ごとに指定が異なる。用紙の種類、サイズ、色補正の有無、ラミネートの種類、納期の優先度、複数枚の場合の綴じ方──これらの組み合わせは無数にある。 定型の入力フォームを作っても、「この部分だけ特別対応」という例外が必ず発生する。その例外を書き加えるために、手書きのメモが指示票に追加される。デジタルのフォームに手書きのメモが貼り付いた状態が常態化する。 工場側は、デジタルデータと手書きメモの両方を参照しながら作業する。どちらが最新の指示なのか、見落としがないか──確認の手間が増える。理由② 校正・確認のやり取りが、電話とFAXで完結している看板やのぼり旗などの制作物は、印刷前にお客さまへの確認(校正)が必要なことが多い。工場でデータを組み上げ、PDF等で確認を取り、修正があれば反映して再確認する。 このやり取りが、電話とFAXで行われているケースがある。「修正内容をFAXしてください」「電話で確認しました」という形で進み、その記録が残らない。 後から「言った、言わない」のトラブルが発生したとき、確認の証跡がない。修正指示が工場に正確に伝わっているかどうかも、担当者の記憶に依存する。理由③ 複数案件の進捗が、担当者の頭の中にしか存在しない受付窓口には、同時に複数のオーダーが走っている。急ぎの案件、校正待ちの案件、工場で加工中の案件、納品待ちの案件──これらが混在する。 この進捗管理が、担当者のホワイトボードや手書きメモで行われていることが多い。一目で全体が見渡せるという利点はあるが、担当者が不在になると誰も状況を把握できない。 急ぎのお客さまから「今どこまで進んでいますか?」と問い合わせが来たとき、担当者に連絡するしか確認手段がない。複数の担当者が案件を分担していれば、情報の所在がさらに分散する。根本にある構造──「一件ごとの違い」がシステム化を阻む3つの理由に共通しているのは、案件ごとの個別性が高く、標準化が難しいことだ。 量産品の製造であれば、同じ工程を繰り返すシステムが有効に機能する。しかし写真・プリント加工は、一件ごとに仕様が変わる受注生産だ。標準フォームから外れる例外が常に発生し、その例外を人が補完する構造になっている。 この構造を変えるためには、まず「どんな例外がどれだけの頻度で発生しているか」を把握することが必要だ。例外の種類と頻度を整理すれば、標準化できるものとできないものが見えてくる。現行調査は、その仕分けをするための作業でもある。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断