医療機器の保守は、「記録の正確さ」が直接リスクに関わる病院向け医療機器(MRI・人工呼吸器・内視鏡・輸液ポンプなど)の巡回保守は、他の設備保守と異なる特殊性がある。機器の不具合が、患者の安全に直結するからだ。 そのため、点検・修理の記録は医療機器法に基づく義務として課せられており、精度と継続性が求められる。 しかし実態として、その記録管理が担当者の手帳やExcelに依存しているケースがある。義務として記録しているのに、その記録が活用できる状態になっていない──この矛盾が、この業態に潜む構造的な問題だ。理由① 機器ごとの点検・修理履歴が、担当者の手元にしかない巡回保守の担当者は、複数の病院・複数の機器を担当する。それぞれの機器について、前回の点検内容、指摘事項、部品交換の記録を把握しながら次の点検に臨む必要がある。 この情報が、担当者の手帳や個人管理のファイルに存在している場合、担当者が変わったときに引き継ぎが機能しなくなる。 医療機器の保守は「前回との変化」を見ることが重要だ。前任者がどんな状態を記録していたかを知らずに点検を行うと、異常の見落としリスクが上がる。記録が引き継がれないことは、技術的な問題だけでなく安全管理上のリスクだ。理由② 病院ごとの窓口・契約条件が複雑で、本部が全体を把握できない医療機器の保守契約は、病院ごとに対象機器・点検頻度・緊急対応の条件・費用が異なる。大病院では担当窓口が複数の部署にまたがることもある。 この契約情報の管理が、担当営業や保守担当者の個人ファイルに分散していることが多い。本部が「どの病院に、どんな契約で、何台の機器を保守しているか」を一覧で把握できない状態になっている。 担当者が退職したとき、その病院との関係の全体像が消える。引き継ぎ書に書ける内容には限界があり、「あの病院のあの担当者にはこういう伝え方が必要」という文脈は移転できない。理由③ 緊急対応の記録が、日常の保守記録と分離している医療機器に不具合が発生したとき、担当者は緊急で現場に向かい対応する。この緊急対応の記録は、日常の定期点検記録とは別に管理されることが多い。 しかし機器の状態を正確に把握するためには、定期点検と緊急対応の両方の履歴を統合して見る必要がある。「この機器は半年で3回緊急対応が発生している」という事実が見えれば、部品交換や機器更新の判断ができる。 記録が分離していると、この判断に必要な情報を集めること自体が困難になる。まとめ──「記録する義務」と「記録を使える状態にする」は別のこと医療機器の保守では、記録の義務は満たしている。しかし記録が担当者ごとに分散し、引き継ぎができず、統合して見られない状態では、記録の本来の価値が活かされていない。 現行調査で「どの記録がどこにあるか」を整理することが、この業態における管理改善の出発点だ。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断