「設計書がないシステムを調べたい」「ベンダーが変わったが、引継ぎ資料が何もない」「社内に詳しい人がいない状態で、システムを把握しなければならない」——こうした状況に直面したとき、多くの担当者は途方に暮れます。しかし「設計書がない」ことは、「調べられない」ことではありません。なぜ設計書がないのに動いているのかまず前提として、設計書がないシステムが存在すること自体は珍しくありません。特に、数十年前に開発・導入されたシステムや、担当者が少ない中でベンダーと二人三脚で作り上げてきたシステムでは、「完成した後、設計書はどこかへ」というケースが多く見られます。あるいは、設計書は当初存在していたものの、その後の改修・追加・変更が繰り返される中で、設計書の更新が追いつかなくなり、現実の動きと乖離してしまった——これも非常に多いパターンです。設計書がないシステムを把握することは、「設計書を再作成する」こととは異なります。目的は「今どんな動きをしているか」「どのデータを処理しているか」「何に依存しているか」を明らかにすること、つまり現行の実態を把握することです。これを現行調査と呼びます。現行調査の4つのアプローチ設計書がない状態からシステムを把握するには、複数のアプローチを組み合わせます。①稼働確認ヒアリングシステムを実際に操作している人(業務担当者)に対して、「何のために使っているか」「どんな流れで処理するか」「困っていることや気になることはあるか」をヒアリングします。業務担当者はシステムの詳細な設計は知らなくても、「この処理をするとここに出てくる」「月末はこれをやらないと翘日の処理が動かない」という実態を知っています。②ログ・データの観察システムが生成するログファイル、DBに格納されているデータ、出力されるレポートや帳票を観察します。「何のデータが、どんなタイミングで、どう変化しているか」がログやデータから読み取れる場合があります。③ソースコード・設定ファイルの確認システムのソースコードや設定ファイルが存在する場合、それを読み解くことで「どんな処理をしているか」が分かります。ただし、ソースコードが古い言語・フレームワークで書かれている場合や、コードが難読化されている場合は、解析に専門的な知識が必要です。④ベンダーや元担当者へのヒアリングベンダーや前任の担当者にアクセスできる場合、当時の設計意図・変更履歴・既知の問題点をヒアリングします。「なぜこうなっているか」の文脈を最も持っているのはこの人たちです。ただし、担当者が変わっている・ベンダーが変わっているケースでは、この情報が得られないことも多い。AI仕様解析とは何か近年、AIを活用したシステム仕様解析という手法が実用的になっています。これは上記の現行調査アプローチを、AI技術を活用して効率化・精度向上したものです。特にソースコード解析の領域では、AIが大規模なコードを読み解き、「このシステムはどんな処理を行っているか」「どのモジュールがどのデータを処理しているか」「どこに古い処理や廃止されていない機能が残っているか」を整理することができます。これにより、従来は「詳しい人が長時間かけて読み解く」しかなかったレガシーシステムの仕様解析が、より短時間・低コストで実行できるようになりました。ただし、AIによる仕様解析はすべてを解決するものではありません。AIが読み解けるのは、コードやデータとして存在する情報です。「なぜこうなっているか」という文脈的な情報、業務上の意図、担当者の暗黙知は AIだけでは把握できません。ヒアリングや業務担当者との連携は依然として必要です。現行調査で「何が分かるか」「何が分からないか」現行調査を行うことで把握できることと、それでも難しいことを整理しておきます。把握できることシステムの全体像(何があって、どう連携しているか)主要な処理フローとデータの流れ依存関係(このシステムが止まると何が止まるか)既知のリスク・問題箇所ベンダー・外部連携の状況難しいこと「なぜこうなっているか」の経緯・意図(設計者の意図は記録がない限り復元できない)潜在的なバグや未発現の問題(見えていないものは見えない)将来の変更に対する影響範囲の完全な予測現行調査の目的は「完璧な仕様書を作ること」ではありません。「今の状態でどこにリスクがあるか」を把握し、次のアクションの判断材料を得ることです。現行調査を始めるタイミングと方法現行調査に適したタイミングはいつか——「今すぐ」が最善の答えです。システム刷新を検討し始めたとき、担当者の退職・異動が決まったとき、ベンダー変更を検討しているとき——こうした「何かが起きたとき」が多くの現行調査の動機になりますが、実際には「何かが起きる前」に実施することで最大の効果を得られます。ライクバードでは、グループ子会社・中堅企業向けのシステム現行調査(AI仕様解析)を提供しています。設計書がない・ベンダーに依存している・社内に詳しい人がいないという状況でも対応可能です。「まず現状を把握したい」という段階からご相談ください。→ システム現行調査(AI仕様解析)について詳しく見る