食品の受注加工業は、FAXと手書きが残りやすい構造をしている飲食店・ホテル・スーパーなどからオーダーを受け、加工・製造して納品する食品の受注加工業。この業態は特に、FAXと手書きが根強く残りやすい。 理由は構造にある。受付(受注窓口)・加工センター・本部の三者がそれぞれ別々に動いており、情報の受け渡しが「紙」を介して行われている。しかも食品業界は衛生管理・ロット管理・賞味期限管理という独自の制約があり、「とりあえずデジタル化」が通用しない現場だ。 「FAXをやめたい」と思っている経営者は多い。しかし何から手をつければいいかわからず、止まっているケースがほとんどだ。なぜ「やめたくても、やめられない」のかFAXと手書きをやめられない理由は、習慣ではなく構造にある。 受注窓口では、得意先ごとに異なるフォーマットのFAXが届く。あるスーパーは独自の発注書、あるホテルは電話+FAXの組み合わせ、ある飲食チェーンはメールと口頭の混在。得意先の数だけ対応パターンがある。これを一律にデジタル化しようとすると、得意先側の協力が必要になり、一気に難易度が上がる。 加工センターでは、製造指示書が紙で運用されている。品目、数量、納品先、特別仕様──これを職人・作業員が見ながら加工する。ミスがあれば食品ロスや納品遅延に直結するため、現場は「慣れた紙の運用を変えたくない」という意識が強い。 本部では、得意先ごとの価格・仕様・納品条件の管理がExcelと紙台帳に分散している。担当者が頭の中で全体を把握している状態で、「誰かに聞けばわかる」が当たり前になっている。見えていないリスクが、三か所に潜んでいるFAXと手書きで「回っている」間は問題が表に出ない。しかし三か所にリスクが潜んでいる。 一つ目は、受注ミスと転記ミスだ。FAXで届いた内容を手で書き写し、製造指示書に落とす作業が挟まる。この転記の工程でミスが発生したとき、責任の所在が曖昧になりやすい。 二つ目は、トレーサビリティの脆弱さだ。食品業界では、原材料のロット番号・使用日時・担当者の記録が求められる場面がある。これが手書き台帳に分散していると、得意先や監査機関から問い合わせがあったときに、情報を集めるだけで数時間かかることがある。 三つ目は、担当者依存だ。どの得意先がどういう条件で、誰が窓口で、どう対応してきたか──これが特定の担当者の頭の中にしかない。その人が休んだとき、辞めたとき、初めてその依存の深さが露わになる。最初にやることは、「流れを一枚の紙に書く」ことFAXと手書きをデジタルに変えることが目的ではない。情報が途切れず、正確に流れる状態を作ることが目的だ。 そのために最初にやることは、今の情報の流れを一枚の紙に書き出すことだ。 注文がFAXで届いてから、加工センターに指示が渡り、製品が納品されるまで──誰が、何を、どのタイミングで、どのツールを使って処理しているか。この流れを追うと、「ここで情報が止まっている」「ここで転記が発生している」「ここだけ担当者の記憶に頼っている」という箇所が見えてくる。 この作業を「現行調査」と呼ぶ。システムを選ぶ前に、今の実態を自分たちで把握する作業だ。 現行調査なしにシステムを導入すると、「便利なはずなのに現場が使わない」「導入したが業務フローと合わなかった」という結果になりやすい。現行調査は遠回りに見えて、最も確実な最初の一手だ。まとめ──「全部変える」より「流れを知る」が先食品の受注加工業がFAXと手書きを脱するために必要なのは、最新のシステムでも大きな予算でもない。 今の業務の流れを、関係者全員で共有できる状態にすること。それがスタートだ。 流れが見えれば、どこを変えればいいかが自然に見えてくる。変える場所が決まれば、必要なシステムも絞られる。その順番を守ることが、この業態でデジタル化を成功させる唯一の現実的な道だ。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断