「特注が当たり前」の業態は、デジタル化が最も難しい木材・金属・ガラス・石材など、建材や資材の加工手配業は、受注加工業の中でもデジタル化が特に遅れやすい業態だ。 理由は一つに集約される。注文が毎回違うからだ。 飲食チェーンへの食品加工なら、同じ商品を繰り返し作る。クリーニングなら、工程は標準化できる。しかし建材・資材の加工は、案件ごとに寸法・仕様・素材・納期が異なる。「同じ注文」がほぼ存在しない業態で、標準化を前提としたシステムはなじみにくい。 これが紙とExcelが残り続ける、最も根本的な理由だ。図面・仕様書が「紙で来る」という現実建材・資材の加工手配では、注文に図面や仕様書が添付されることが多い。施工業者・工務店・設計事務所から、手書きの寸法メモやFAXで送られた図面とともに注文が届く。 この図面を見ながら、加工センターの職人が作業する。デジタル化を考えるとき、「注文データ」だけを電子化しても、図面が紙のままであれば意味をなさない。図面と注文情報が別々の場所に存在する状態になり、むしろ管理が複雑になる。 「図面も含めてデジタル管理したい」となると、施工業者・工務店側の対応も必要になる。取引先を巻き込まなければ変えられない部分が多く、自社だけで完結しない。これが「変えたくても変えられない」状態を作っている。価格・条件が取引先ごとに違い、Excelでしか管理できていない建材・資材の加工手配業では、取引先ごとに単価・掛け率・支払い条件が異なることが多い。長年の取引の中で、個別の交渉と慣習が積み重なった結果だ。 これを管理するExcel台帳は、担当者だけが使い方を知っている状態になりやすい。列の意味、シートの使い分け、計算式の構造──これらが属人化し、「担当者がいないと請求書が作れない」という状況が生まれる。 受注が増えるほど、そのExcel台帳は肥大化する。しかし「動いているから触りたくない」という心理が働き、誰も手を入れない。気づけば、修正不能に近い状態になっている。納期管理が属人化し、頭の中でしか動いていない建設現場の工程は、天候・施工の進捗・他の業者との兼ね合いで頻繁に変わる。それに伴い、資材の納期も突然変更になる。 「○○工務店の現場、来週に前倒しになった」という電話が入り、加工センターに口頭で伝わり、担当者が段取りを組み直す。この動きが早ければ早いほど、記録に残らない。 結果として、いつ・どの案件が・どの加工状況にあるのかを把握しているのは、特定の担当者だけという状態になる。その担当者が不在の日に顧客から進捗確認が来ると、誰も答えられない。「なぜ残り続けるのか」への答えここまで見てきた構造をまとめると、建材・資材の加工手配業に紙とExcelが残り続ける理由は三つだ。 一つ目は、注文が毎回異なるため、標準化が難しいこと。二つ目は、図面・仕様書が取引先側の紙運用に依存しており、自社だけでは変えられないこと。三つ目は、価格・納期の管理が担当者の頭と手に依存しており、記録として残っていないこと。 これらは「ITに不慣れだから」ではなく、業態の構造から来ている。だからこそ、「システムを導入すれば解決する」という発想では変えられない。まとめ──変えるために必要なのは、現状の「見える化」から変化の入口は、今の業務の流れを整理することだ。 注文が来てから納品されるまで、誰が何をしているか。図面はどう扱われているか。価格はどこに記録されているか。納期の変更はどう伝達されているか。これを書き出すことで、「ここだけは変えられる」「ここは取引先を巻き込まないと無理」という判断ができるようになる。 全部を一度に変えようとしなくていい。変えられる場所から、一つずつ手をつける。その判断の材料を揃えることが、この業態でデジタル化を前に進める最初の一歩だ。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断