「また来た車」なのに、前回の整備内容が見えない車検チェーンや自動車整備業は、リピートが前提の業態だ。2年ごとの車検、定期点検、オイル交換──同じ顧客が、同じ車で、繰り返し来店する。 にもかかわらず、多くのチェーンで「前回の整備内容」が次回来店時に即座に引き出せない状態になっている。 受付スタッフが「以前もご来店いただいていますか?」と聞き、お客さまが「去年も車検で来ました」と答えても、前回の担当者・整備内容・使用部品を確認するのに時間がかかる。あるいは確認できないまま、新たにヒアリングし直す。問題① 整備記録が店舗の紙台帳に残り、横断検索できない整備記録は法定の保管義務があるため、各店舗で保管されている。しかし多くの場合、その保管が紙の台帳やローカルのExcelファイルで行われており、チェーン全体で横断検索できる状態になっていない。 A店で整備した車がB店に来たとき、A店の整備記録は参照できない。チェーン内で店舗をまたいでも、顧客と車の履歴がつながらない。 これは顧客体験の問題だけでなく、整備品質の問題でもある。前回交換した部品の情報、過去に発見された不具合の履歴──これが見えないまま整備すると、同じ箇所を重複点検したり、前回の状態と比較できなかったりする。問題② 次回点検・車検の案内が、担当者の記憶か紙の一覧に依存している車検の有効期限は車ごとに決まっており、次回の来店タイミングが予測できる。定期点検の推奨時期も同様だ。これを活用して「そろそろ車検の時期です」と事前に案内できれば、来店の機会を作れる。 しかしこの案内が、担当者がExcelや紙の一覧を手作業で確認して行われている場合、漏れが発生しやすい。担当者が変わると、そのリストの存在自体が引き継がれないこともある。 案内を出すタイミングを逃した顧客が、別のチェーンで車検を済ませてしまう。既存顧客の流出が、じわじわと続いている会社の多くで、この構造が見られる。問題③ 法人フリートの管理が、担当者のExcelに閉じているタクシー会社・運送会社・リース会社などからの法人契約(フリート管理)は、整備業にとって安定した収益源だ。複数台の車両を定期的に整備する契約で、単価も高い。 この法人契約の管理が、担当者のExcelファイルに集約されていることが多い。どの車両が次にいつ点検を受けるか、契約の更新時期はいつか、特別対応の取り決めは何か──これらが担当者の手元にしかない。 担当者が退職すると、その法人顧客との関係の経緯が丸ごと失われる。引き継ぎの質が、顧客維持率に直結する。まとめ──整備記録と顧客情報がつながると、何が変わるか整備記録と顧客情報がつながった状態になると、三つのことが変わる。 一つ目は、整備の精度が上がる。前回の状態と今回を比較できるからだ。二つ目は、来店促進が能動的にできる。次回来店タイミングをシステムが教えてくれるからだ。三つ目は、担当者が変わっても顧客対応の質が落ちない。記録が人ではなく会社の資産になるからだ。これを実現するための出発点は、現状の整備記録がどこにあり、誰がどう管理しているかを書き出すことだ。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断