「裾上げ」は単純に見えて、管理は複雑だ洋服の青山やAOKIなどの紳士服チェーンの背後には、裾上げ・ネーム刺繍・ウエスト調整などを担う加工工場がある。店舗でお客さまが購入した衣類を、加工工場が仕上げて店舗に戻す──典型的な受付→センター→本部のBtoB業態だ。 作業自体はシンプルに見える。しかし複数の店舗から、それぞれ異なる納期・仕様・数量のオーダーが同時に流れ込む構造は、管理の難易度を大きく上げる。 納期トラブルが繰り返される会社には、決まったパターンがある。パターン① 店舗ごとの「急ぎ」が管理されていないアパレル加工のBtoB受注では、通常納期の案件と急ぎ対応の案件が混在する。お客さまが「今日中に着たい」「明日の式典に間に合わせたい」という状況で、店舗から工場に「急ぎでお願いします」という連絡が入る。 この「急ぎ」の管理が、電話と口頭の連絡だけで行われていることが多い。工場側は複数店舗からの急ぎ依頼を、担当者が頭の中で優先順位をつけながら裁いている。 どの案件がどの程度急ぎなのか、優先順位が変わったとき工場全体に伝わっているか──これが見える状態になっていないと、「言ったはずなのに対応されていなかった」という連絡ミスが起きる。パターン② 加工指示の「変更」が、工場に届く前に作業が始まっている店舗でお客さまと話しながら決めた加工内容が、後から変更になることがある。「やっぱり裾の長さをもう少し短くしてほしい」「刺繍の位置を変えたい」という変更依頼だ。 変更の連絡が工場に届く前に、すでに加工が始まっていることがある。工場側は受け取った指示票通りに動いているから悪くない。店舗側は変更を伝えたつもりでいる。しかし連絡の行き違いで、仕上がった後から問題が発覚する。 この構造は、変更情報がリアルタイムで工場に届く仕組みがないことから生まれる。電話で口頭伝達した変更内容が、指示票に反映されないまま作業が進んでしまう。パターン③ 複数店舗の受注量と工場のキャパシティが、見えていない繁忙期(スーツの需要が高まる入学・就職シーズンなど)には、複数店舗から大量のオーダーが一気に工場に流れ込む。工場のキャパシティには限界があるが、各店舗は工場の混み具合を知らずにオーダーを入れる。 結果として、受け入れキャパシティを超えた状態になって初めて工場から「間に合わない」という連絡が来る。店舗はすでにお客さまに納期を伝えている。この後から発覚する納期遅れが、クレームとブランド毀損につながる。 工場の受入状況と各店舗の発注状況を可視化する仕組みがあれば、事前に調整できる。しかしその仕組みがない状態では、問題は毎年同じ時期に同じパターンで繰り返される。まとめ──繰り返される納期トラブルの根本は「情報の非同期」にある3つのパターンに共通しているのは、店舗と工場の間で情報が「非同期」の状態にあることだ。 急ぎの優先度、変更指示、キャパシティの状況──これらがリアルタイムで共有されず、電話と紙を介して事後的に伝えられる。その時間差が、トラブルを生む。 改善の入口は、今の情報の流れを一度追うことだ。どの情報がどのタイミングで、どの手段で工場に届いているかを書き出すと、非同期が起きている箇所が特定できる。そこから、何を変えると最も効果が出るかの議論が始められる。当社ではまずはどの課題から取り組むべきかを客観的に整理するシステム運用課題診断を提供しています。 こちらもよろしければご覧ください。システム運用課題可視化診断