はじめに:分析ツールって、結局どこから始めればいいの?GA、サーチコンソール、Tableau、BigQuery、Snowflake、Mixpanel、Looker Studio……分析周辺に関連するツールなどの名前はよく聞くけれど、「自分たちがどれをどう使うべきなのか」は意外と全体像が見えていないものです。実際に当社も様々なプロジェクトの場面でお客様と会話していても、「GAは見てるけど、何かできてるわけじゃない」「Mixpanelってうちに必要なんだっけ?」といった声をよく聞きます。この問いに対しては私の持っている答えは:「必要です。しかし段階を追って環境・組織レベルを上げていく必要があります」やみくもに数値が見られる環境を整えても、事業インパクトを与える示唆は得られません。コンサル会社やWebマーケ会社のデータ“だけ”を頼りにしていると、「出てきた数値と解釈」を理解して意思決定をするだけになり、それは「二次情報」での意思決定となり、納得感のある、自社の事業を突き詰めた仮説検証とはなり得ません。こうした状況下で、企業様が仮説検証を進めるためには、まず全体像を可視化することが必要だと考えました。そこでこのシリーズでは、“分析リテラシーのレベル”を4段階で整理し、それぞれの段階に合った考え方とアクションを一緒に探っていきます。当社は企業様の向こう側にいるお客様がどのような行動をしているかといった、Webやアプリでのアクセス情報、ユーザー行動データ、売上に関連する情報といった「自社で一次情報が取れるデータ」をもとにしたデータ分析・環境構築支援をしている立場から、そうしたデータの分析を軸に論じていきます。※「データ」というと自社で取れるデータ以外にも、社外にある市場や競合データなどもあります。今回はそうしたデータの扱いは対象外として考えていきますまずは、全体像として「どんなデータがあるのか」から整理していきましょう。自社で扱う“一次データ”の分類と目的データカテゴリ例分析で得たいことアクセスデータページビュー、セッション、参照元誰が・どこから・どれくらい来てるかユーザー行動データクリック、スクロール、離脱、CV何をしているか、どこで迷っているか売上・業績関連データ購入金額、CVR、LTVどれだけ成果につながっているかこれらのデータをどう読み、どのように施策に変えていけるか。その力が“分析リテラシー”です。次に、データの扱いレベルに応じたリテラシーの段階を整理してみましょう。MixpanelやLooker Studioなど、いろんな分析ツールの名前を見聞きするけど、正直「自分はまだGA(Google Analytics)とサーチコンソールを眺めてるだけ」だな、と思うことってありませんか?でも、それでいいんです。この記事では、分析リテラシーの“レベル1”として、GAとサチコで「見るだけ」になっている状態を言語化し、むしろそれが大事な入り口であることをお伝えします。分析リテラシー4段階:まずは全体像を知っておこう4段階主な思考扱うデータの深さ主なアウトプット主なツールレベル1観察表層(アクセス数・検索流入)気づき、基本的な比較GA, サチコレベル2傾向把握中層(検索KW・滞在率など)改善対象の特定GA, サチコ, スプレッドシートレベル3仮説検証深層(行動・CVとの関係)導線やコンテンツの改善GA4, LookerStudio, BIツールレベル4意思決定統合(複数データの接続)ROI評価、施策展開Mixpanelなどこの記事では、その中でも最初のステップである「レベル1」について深掘りしていきます。レベル1って、特別なことじゃない。けれども一番大事な基礎「レベル1」というと“分析しているとは言えないのでは?”と感じる人もいるかもしれませんが、実は一番大切な土台の段階です。この段階では、以下のようなことができています:毎日アクセス数をチェックする習慣がある新しく出した記事が検索に出てきたかを見るどのページがよく読まれているかに気づけるつまり、「数字を見る習慣」がある。そして「自分の発信が届いてるか」が気になっている。これだけで、すでに分析の第一歩を踏み出しています。レベル1でやっていること:あるあるの具体例GAで「昨日よりアクセス下がった…」とつい落ち込む国別で「え、こんなところからアクセスあるんだ」とテンションが上がるサーチコンソールで「この検索ワードで来てるのか〜」と発見がある重複ページのエラーにちょっと焦るが、実は何をすればいいかはよく分からないこのように、「ながめてるだけ」に見えて、実は発見の連続です。だからこそ、この段階に長くいてもいいし、飽きずに続けることこそが重要なんです。レベル1でも「もう少しだけ」やってみたいこと手探りだと次になかなか進めません。ここではもう少しだけ次につながる一歩を書き出してみます。GAやサーチコンソールで「ちょっとだけ見てみる」と広がる視点ツールやることなぜ見るのか見える“量”見える“質”GA直帰率や平均滞在時間をチェックページがしっかり読まれているかを確認したいセッション数、滞在秒数関心の深さ、離脱しやすさGAデバイス別アクセスを見るスマホとPCで読まれ方が違うかを把握したいデバイス別ユーザー数ユーザー体験の違い(レイアウト・使いやすさ)サチコ表示回数が多くてCTRが低い検索ワードを探す「見られてるのにクリックされない」原因に気づきたい検索表示回数、CTRタイトル・説明文との一致度、魅力度の弱さサチコページごとの掲載キーワードを見てみる意図してないキーワードで拾われているかも?表示回数、掲載順位検索意図とのズレ、コンテンツの焦点の曖昧さChatGPTを活用すると、レベル1でも効率が上がるせっかく生成AIがこれだけ広がってきているならば、使わない手はありません。1人で考えても煮詰まるばかりなので、こんな使い方をすると更に見えてくる景色があるのでは?と考え、「これをやってみよう」というTIPSを表にしてご紹介します。やることなぜそれをするのか何がわかる・得られるかGAやサチコの画面をスクショして貼る自分で見ても気づかないポイントを補う客観的に「他に見えること」を教えてくれるサチコの検索ワード一覧を貼って「改善対象になりそうなワードは?」と聞くデータの並びをもとに優先度を考えたいCTRが低いワードや意外なヒントが見つかるGAでアクセスの多いページが出てきたら「なぜ増えた?」と聞くページの変化や外的要因を考えるヒントになる仮説のきっかけになる視点がもらえる「この数字、見てるだけになってる気がする」と話すモヤモヤを言語化するため分析の“問い”の形を整えてもらえる考察の「精度」よりも、「気軽に整理する・アウトプットする習慣」が大切。ChatGPTを相棒にすることで、レベル1でも分析っぽい視点がぐっと近づいてきます。「もっとがっつり分析しよう」と身構える必要はありません。でも、もし少しだけ余裕が出てきたら、以下のことを試してみると新しい視点が得られるかもしれません:GAで:・直帰率や平均滞在時間を見る(読まれている“深さ”に気づける)・デバイス別アクセスを見る(スマホが多い?PC?)サーチコンソールで:・表示回数が多いのにクリック率(CTR)が低い検索ワードを見つける・キーワードとページの関係性を意識してみる(このキーワードでこのページが出てるのか)この段階での目標は、「仮説を立てる」でも「施策を打つ」でもありません。まずは、“へぇ、そうなんだ”と思うだけでいい。その気づきが、自然と「次は何を見よう?」「なぜこうなってるんだろう?」という“問い”を生み出してくれます。おわりに:レベル1のままでいい。でも、“問い”が生まれたら、それはもう次の準備ができている証拠レベル1でやっていることは、特別な知識がなくてもできるからこそ、継続する力になります。むしろ、「数字を見るのが楽しい」「気になるから見る」という状態は、分析ツールを“自分ごと”として使い始めているサインです。そして、もし「もっとこういうことが分かったらいいのに」と感じるようになったら、次回のレベル2編を読みに来てください。(頑張って書きます)一緒に、分析リテラシーの階段を、焦らず、楽しく登っていきましょう。このシリーズでは今後、レベル2・レベル3・レベル4と段階的に記事を公開していく予定です。「うちってまだこの段階かも」と思った方にとって、無理なく次の一歩が見つかるような内容を目指します。